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2015年11月作品 ※この商品はメール便対象商品です(3点以内)
■作品説明
帰れない湊
開け放った車窓から懐かしい海風の匂いが入ってくる。
同じ海でも、ここの海風は芋畑の土の匂いが混ざっている。
遠い香川から、故郷の茨城へ。まるで家出少年の気持ちで見るひたちの大地は、
誰よりも会いたくて、けれども誰より会いたくない彼奴のよう。
ふと向かいの席に目をやると、一人の知らない女。
彼女は、責めるような、すがるようなまなざしで僕の瞳を捕えて離さなかった。
『お前もか......』。
僕はすぐに彼女の心情を汲んだ。
僕も、彼女も、帰りたい湊へ帰ることができない難破船だった。
『湊線』と呼ばれる小さな列車は、
二つの物語を乗せて、ゆっくりと動き出す。