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2012年11月作品 ※この商品はメール便対象商品です(3点以内)
■作品説明
その本に出会ったのはひょんなことがきっかけだった。もう10年以上前、僕はある夢を見た。
目覚めた時にはただ「グルリル」という地名が出てきたことだけを覚えていた。そこで僕は何かひどい目にあって、それは寝汗でわかった、でもそれがどんなひどい目なのかは全く覚えていない。
それから7年後、今度はプラハに旅行にいったとき。現地の友人とその恋人(ドイツ人の男性)の家に泊まらせてもらった。そのドイツ人は日本語が上手で、日本の文化にも詳しく、ムーンライダーズと石野卓球のファン、僕らは朝まで喋り明かした。
そのときに、彼がいま日本語に翻訳しているSF小説の話になった。それが「近未来グルリル」である。僕はそのコピーをもらい、旅の間に読んだ。その街は灰のようなものがずっと降り続いていた。
そしてさらに時間が流れ、つい先日だ、次回作のタイトルを決めなくてはいけない〆切りの日がきた。思いつかないままネタ帳を広げ、ぱらぱらめくっていると「グルリル」という文字があった。夢で見た地名、と書かれている。僕は急いで訳文のコピーを探したが見つからなかった。
旅先で捨ててしまったのだろうか。プラハの友人に連絡したが、彼とはもう別れて今はどこにいるのかは知らないの、と言われた。途方に暮れて、外を歩いてると上から雪が降ってきた。7月だというのに。目の前を「グルリル〜!」と呼ぶ女性が通り過ぎる。一匹の猫が向こうの壁の上でニャーと鳴いた。
ーーー2時間、灰のようなものが降り続ける、地層の演劇。
■キャスト
赤星マサノリ
平林之英
井田武志
宮川サキ
安元美帆子
吉陸アキコ
椎原小百合
澤村喜一郎(ニットキャップシアター)
岡嶋将英
榎園実穂