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2018年1月作品 ※この商品はメール便対象商品です(3点以内)
人数:男1 上演時間:約80分
■作品説明
作:春陽漁介
演出:春陽漁介
ゴウンゴウンと唸るそれは、じっとりと染み付いた記憶をすすぎ落とすように、
健気でありました。それは、タイムマシンの温もりと似ております。
西武池袋線の練馬高野台駅から徒歩十二分。家賃五万二千円。築二十三年の木造アパートの二階の一番西側。
雨水でまだら模様に染まる扉を出る。十二年前オザワで買ったシルバーのオーディナリーでシミラーな自転車を、時速十五キロ程度で三十二分吹かせば、このコインランドリーに到着する。
ギリギリギリ。
錆びれたサッシ扉を重ねれば、コンクリートの床で狭そうに並ぶ洗濯機たちが出迎えてくれる。八台ある洗濯機。布団用の大きいのが二台と普通のが五台。それと、小さいスニーカー用のが一台。
大きい二台が父親と母親でして、スニーカー用は六年前にやって来た末っ子です。ちなみに父親はぶっ壊れてます。
中央には、ガタついたテーブルがひとつと、座面が傾いて滑り台と化したパイプ椅子が三脚。半年前まで四脚あったけど、裏のアパートに越して来たガキが、ひとつ盗っていった。
入口の右側に棚があって、雑誌やら漫画やらがぎゅうぎゅうに詰まっている。
昔はここのオーナーが定期的に入れ替えていたが、いつからかその制度は無くなった。だから今は俺が管理している。いらなくなった本があったら置いてってくれて構わない。
入り口の上に「贈 双柳大学アメリカンフットボール部」と刻み込まれた時計がある。これは十三分遅れているので、注意が必要。何回か正しい時間に直した事はあるが、三十五時間後にはきっちり十三分遅れる。だから諦めた。まあ、これがここの時間って事。
先月ここを訪れたのは、俺を含めてのべ二十人と八匹。売上は一万五千円。
これが、ここの全て。
俺は、今日もここに座って、ここにやって来る人たちを見る。考える。そして、語る。