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商品コード: 39030018
劇団肋骨蜜柑同好会『特別企画『田瓶奇譚集』』台本
販売価格(税込): 2,000
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■商品説明

脚本
窪寺奈々瀬(AURYN)
中嶋康太(Mrs.fictions)
フジタタイセイ(劇団肋骨蜜柑同好会)
ホトンドケイ素(劇団肋骨蜜柑同好会)
目崎剛(たすいち)
屋代秀樹(日本のラジオ)


あら、なにかお探しですか?なにが知りたいの?
田瓶市ははじめて?それとも、何度かおいでになったことが?おもしろい町でしょう。
ここにはね、いろんな本がありますよ。そりゃあなんでもってわけにはいかないけれど、まあそれなりに。
そう、オハナシが読みたいの。それならたくさんありますよ。なんなら私のとっておき、お教えしましょうか。

田瓶市立図書館の貸し出しカウンターにはいつも、噂好きの司書が座っている。不思議な話がききたいときは、彼女に話しかけてみるといい。きっと、嬉々として話してくれるはずだ。山間の町田瓶市でまことしやかに囁かれる、奇妙奇天烈な「オハナシ」たちを。

劇団肋骨蜜柑同好会が特別企画として贈る、妄想都市の「奇譚集ホラーアンソロジー」。5つの団体が、田瓶市を舞台に約30分の短編を書き下ろします。一筋縄ではいかない劇作家達による、千夜一夜の物語をどうぞお楽しみください。

【各作品のあらすじ】
■AURYN『ゴーシュ』
脚本:窪寺奈々瀬(AURYN)
男は眠れない日々が続いていました。
夜通し鳴り響く音楽。
その不穏で切なくノスタルジックな旋律は
いったいどこから聞こえてくるのか、分かりません。
ただ癒すように誘うように、今日も一晩中響きます。

ある夜、呼び鈴が来客を告げ
男は億劫そうに扉を開けました。
二十日過ぎの月のひかりが部屋を照らします。

「わたしを、なおして」

そのひとは言いました。
男は戸惑って答えます。私は医者ではありません。
そのひとは首を振りました。

「いいえ、あなたは、わたしをなおしてくださいます」

■Mrs.fictions『そして誰もいなくなるまで待って』
脚本:中嶋康太(Mrs.fictions)

だから、この街がいけないと思います。水と、空気の、この街が。
川がよくないです。花もよくないです。それに、天井が低くて、砂が苦くて、灯りが隅まで届きません。だけど、逃げ出すはないですよね。だって、逃げ出す人がいる街はよくない街でしょう。いつも、人の目が、耳が、ありますから。人の?はい。なので消えます。そして、誰もいなくなるまで待って、それから、終わります。わかります。大丈夫です。最後にはちゃんと、全部みんな、いなくなりますので。砂みたいに散りますので。あとは、吸い込んだら次は、もう順番ですので。

■劇団肋骨蜜柑同好会『もっけの幸い』
脚本:フジタタイセイ(劇団肋骨蜜柑同好会)

たしかに、それは思いがけない幸運であった。
どうしようもなく膿んだ心の傷が、私たちを引き合わせたのだろうか。
恨み言ならいくらでも言えるけれど、言ったところで失くしたものは戻らないし、腹は減る。
田植えの季節は雨ばかり。
土は流れて芽も出ない。
石に躓きスッテンコロリ。
お陰で顔は泥だらけ。
ふくろうは啼き、蛙は嗤う。
どうしてこんなについてない?
そうして君はここに来た。
どこからともなくやってきた。
あやふやで、たしかで、ふわふわで、びしょぬれで、かなしくて、いとおしい。
どこにでもあるような、どこにもないような。
訳もわからぬ曖昧なそれはいつも、ただそこにいて笑ってくれる。
理不尽なことには一緒に怒ってくれる。
何てかわいらしい。何てかわいそう。
取るに足らない私たちに訪れた、
ほんの些細な“もっけの幸い”

■劇団肋骨蜜柑同好会『腸詰と極楽』
脚本:ホトンドケイ素(劇団肋骨蜜柑同好会)

日当たり良好、四畳半、風呂トイレ共同、家具付き、ルームメイト付き
最寄り駅まで20分、先生の家まで徒歩5分
家賃5万、アメニティ10万(少し高い気もするけれど、自己投資は大切だ)

未来の成こうのための、ささやかな根城。
最高の物件とは言えないけれど、十分な条件。
ここから明日を作っていこう。
明日の自分を作るのは今日の自分。
今日の自分が良くないのは、昨日の自分が良くなかったせい。
過去は変えられないのだから未来を変えよう。

本当に?
逃げ出そうと走る間に、輝く未来はありふれた今に、まともな今は腐りはてた過去に成り下がる。
それでもどこかにある成こうを掴むためには走り続けるしかないのだ。

結局のところ、罰がないなら逃げ出す楽しみもないのだから。

■たすいち『隣は猫をする人ぞ』
脚本:目崎剛(たすいち)

隣人の様子がおかしい。
引っ越してきて間もないが
何やら夜毎、物音を立てている。
恐らく
こちらに気付かれないように。

一体、何をしているのか。
知りたい。
知りたい。
知りたい。
しかし
知られてはならない。

命が九つあったって、死に至るのだから。

■日本のラジオ『くるくるさん』
脚本:屋代秀樹(日本のラジオ)

くるくるさんは事故で娘を失った母親で、事故の際に千切れて見つからなかった娘の左手の小指をずっと探しています。両手を地面についてよつんばいになりながら、顔を地面すれすれに近づけて「レイコノユビハドコカシラ」と言いながら夜の道をさまよっています。くるくるさんに出会っても、くるくるさんの進路を塞がないよう、静かに音を立てないようじっとやり過ごせば、あなたに害はありません。しかし、けして声をかけたり、くるくるさんの進路に立ってはいけません。くるくるさんがもしあなたに気づいて顔をあげてあなたの方を見たとしても、けして目を合わせてはいけません。くるくるさんは泣きすぎてブヨブヨに膨らんで飛び出した大きな目をしています。この話を聞いた人は3日以内に2分の1の確率で、夢にくるくるさんの娘の霊が出てきます。娘の霊と一緒に夢の中で小指を見つけられなかった場合は、あなたの指をくるくるさんに奪われてしまうでしょう。
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